UPSを使って自宅のPCを停電やブレーカー落ちによる電源断から守る方法を解説します。突然の電源断はPCにとって非常に大きな負荷となり、場合によっては機器の故障・データ損失に繋がります。家庭用UPSを使って万が一に備えましょう。
「UPS」とは?家庭用とは?
まずは「UPS」とは一体どのような装置なのか解説します。企業内のサーバーや業務用端末、監視カメラ装置などでは使われることが多い装置ですが初めて耳にする方も多いはずです。
停電等によるPCの電源断を防ぐ装置
「UPS」とは落雷やブレーカーが落ちた場合など突然の電源断による停電からPCなどの接続機器を守る装置です。「UPS」は日本語にすると「無停電電源装置」となります。
つまり、「UPS」は突然電源断が発生すると故障したりデータが損失したりする機器を守るために予防対策的に設置するのものです。多くのUPSは企業で使用されており大量のデータを処理・保存するサーバーや監視カメラシステム、POSレジなどの業務用端末を突然の電源断から守っています。
ポータブル電源ではない
UPSのよくある勘違いの例として、UPSをモバイルバッテリーやポータブル電源と同じようなものだと思っている例があります。つまり、UPSがあればUPSを外部電源として使用できて、接続している機器を停電時でも使用できると言った勘違いのことです。
UPSはあくまでも「突然の電源断」から接続機器を守るためのものです。そのため、正しいUPSの正しい使い方としては、電源断による停電をUPSが検出したら直ちに正常で安全な手順で接続している機器をシャットダウンするということが重要となってきます。
つまり、UPSは正常にシャットダウンを行うまで時間稼ぎをするための装置ということになります。よって、UPSで電源を継続できる時間も通常は数分~30分程度となっています。
「家庭用」UPSとは?
基本的にUPSに「業務用」「家庭用」の分け方はありませんが、製品によってその価格や信頼性、物理的な大きさに大きな違いがあります。企業のデータセンターで使用しているようなUPSは非常に大きなものであり、家庭用とは言えません。
そのため、本記事では家庭でも使用できるような大きさ・価格帯のUPSを「家庭用UPS」として紹介します。
家庭用「UPS」 ~選び方~
家庭用UPSといっても、UPSには非常に多くの種類・方式があります。そこで、家庭用で使用するUPSの選び方について解説します。
信頼性で選ぶ
UPSは万が一の停電時に高価な装置・大切なデータを守るという非常に重要な役目が有ります。そのため、まずはUPSの「信頼性」に重点をおきましょう。
給電方法
コンセントからUPSに給電される電力は各家庭のコンセントから給電できる「商用電源」です。UPSには停電が起こるまでこの「商用電源」をどのようにして、接続されている機器に届けるのかといった方法の違いとして、3つの給電方法があります。
常時商用給電
「常時商用給電」とは、停電が起きるまでは商用電源をそのまま接続されている機器に流す給電方式です。
そのため、電圧変動があったときや停電時には一瞬ではありますが、UPSのバッテリからの給電に切り替わるまでに瞬電(一瞬電源が途絶えること)が発生します。
ただし、これらの電圧変動や瞬電については家庭で使用するようなPCであればほとんど影響を受けるものではありません。この給電方式のUPSは最も安価で導入できることから、家庭用で使用する分には十分とも言えます。
ラインインタラクティブ給電
「ラインインタラクティブ給電」とは、基本的には「常時商用給電」と同じですが一定範囲内の電圧変動であれば、UPS内の装置が電圧変動を吸収して正常な電源を供給します。
停電時には、「常時商用給電」と同様にUPSからのバッテリからの給電に切り替わるまでの間に瞬電が発生します。ビジネス用途で販売されているUPSでもこの方式が多く販売されており、「常時商用給電」のUPSよりも信頼性に優れています。
常時インバータ給電
「常時インバータ給電」とは、通常時に商用電源から給電される電源についてもUPS内で調整を行ってから給電を行えるUPSです。そのため、停電時にUPSのバッテリからの給電に切り替わるときも瞬電を起こすことなく給電を継続できます。
最も信頼性が高く高品質な電流を給電できるUPSですが、高価なため家庭用とは言えません。ただし、家庭内で公開サーバを構築している方や、絶対に電源を途絶えさせてはいけない装置を利用している方は検討する価値が十分にあります。
波形
UPSの「信頼性」といった面では前述の「給電方式」に重点を置くことがほとんどですが、もう一点「波形」という見方もできます。「波形」とはUPSが出力する電力の波(周波数)の形のことを言います。
高品質な波形は「正弦波」と呼ばれる波形であり、商用電源がこれにあたります。
正弦波
「正弦波」を分かりやすく言うと、なめらかなカーブを描いた波のような波形のことです。商用電源が「正弦波」にあたり、ほとんどの機器で問題なく利用できます。
矩形波
「矩形波」を分かりやすく言うと、凸凹した直線のような波形のことです。通常の家庭で利用するようなPCでは特に問題がありません。しかし、精度の高い周波数を利用している医療用装置や電子レンジ(容量の関係で通常はUPSに繋がない)などは利用できない波形です。
このように「矩形波」は一部の装置では利用できないものです。しかし、価格帯が安いUPSは「矩形波」を出力するものが多く、家庭用のPC程度であれば問題なく利用できますので家庭用UPSという面ではあまり気にする必要はないといえます。
必要な容量で選ぶ
UPSはそのバッテリ「容量」も選ぶ際の基準の一つと言えます。容量の大きい装置を接続しているのに、小さい容量のUPSを利用していると正常に動作できなかったりシャットダウンまで十分な時間を稼げなかったりします。
制御ソフトの付属有無で選ぶ
UPSは前述の通り、停電時にシャットダウンのための時間を稼ぐための装置です。そのため、停電時はなるべく迅速に安全にシャットダウンさせるため操作が必要です。多くのUPSではこれを自動で行うために制御用ソフトが用意されています。
しかし、この制御用ソフトも無料で利用できるものから別途有料でライセンス購入が必要なものまであります。制御用ソフトがなくても手動でシャットダウンできれば良いのですが、常にPCの前にいるわけでもないのであったほうが安心です。
家庭用「UPS」 ~おすすめ~
家庭用の「UPS」について選び方を解説しました。ここからは、実際に「家庭用」としておすすめできるUPSについて紹介します。
なお、それぞれの商品名の先頭にどのような機器の接続におすすめなのかを書いてみましたが、購入前に必ず実際に使用する機器の消費電力を確認してください。
【小型デスクトップ向け】CyberPower「CP375JP」
容量 | 375VA/255W |
給電方法 | 常時商用 |
波形 | 矩形波 |
制御ソフト | 無償(CyberPower PowerPanel Personal) |
家庭用で安価なUPSといえば「CyberPower」のUPSが最適です。バッテリは内蔵式で交換できませんが、使い捨てできる価格帯で制御ソフトも無料で付属します。
「CP375」は容量が小さめなため消費電力の小さな小型デスクトップにおすすめです。少し余裕を持ちたい方は次に紹介する「CP550JP」がおすすめです。
【標準デスクトップ向け】CyberPower「CP550JP」
容量 | 550VA/330W |
給電方法 | 常時商用 |
波形 | 矩形波 |
制御ソフト | 無償(CyberPower PowerPanel Personal) |
「CyberPower」の「CP375」よりも容量が大きく、ゲーミングPCなどグラフィックボードを搭載していない一般的なPCで家庭内用途あれば「CP550JP」がおすすめです。
ただし、おすすめしている「CyberPower」のUPSは「常時商用」&「矩形波」なため信頼性を求める方は次に紹介する「APC」や「オムロン」のUPSをおすすめします。
【標準デスクトップ向け】APC「BK750M-JP」
容量 | 750VA/450W |
給電方法 | ラインインタラクティブ |
波形 | 正弦波 |
制御ソフト | 無償(PowerChute Personal Edition) |
標準的なPCを使用しており信頼性を求める方には「APC」の「BK750M-JP」をおすすめします。「APC」はUPS業界では世界的に有名な企業であり、企業でも非常に多く採用されているUPSを販売しています。
また、「ラインインタラクティブ」&「正弦波」であり、データセンターなどでも利用されている制御ソフトの個人利用版が使用できます。
【ゲーミング向け】オムロン「BN75T」
容量 | 750VA/680W |
給電方法 | ラインインタラクティブ |
波形 | 正弦波 |
制御ソフト | 無償(PowerAct Pro など) |
ミドルスペックのゲーミングPCで価格もそこそこなUPSを探している方には、「オムロン」の「BN75T」がおすすめです。
フィールドエンジニアとして筆者が働いた感覚でみると、企業やデータセンターで使用されているUPSのほとんどで「APC」と「オムロン」の製品が採用されていたため、信頼性という面でも十分良い選択と言えます。
【ハイエンドゲーミング向け】オムロン「BN100T」
容量 | 1KVA/900W |
給電方法 | ラインインタラクティブ |
波形 | 正弦波 |
制御ソフト | 無償(PowerAct Pro など) |
ハイエンドグラフィックボードを搭載しているゲーミングPCの場合は、1KVA/900Wの容量を持つオムロンの「BN100T」がおすすめです。この容量クラスになると、APCの場合は制御ソフトが有償となってしまいますが、オムロンは無償で使用できます。
【ハイエンドゲーミング向け】APC「SMT1500J E」
容量 | 1500VA/980W |
給電方法 | ラインインタラクティブ |
波形 | 正弦波 |
制御ソフト | 有償(PowerChute Business Edition) |
APCでハイエンドゲーミングPC用のUPSを用意したい場合には「SMT1500J E」がおすすめです。ただし、制御ソフトは有償ライセンスが必要な「PowerChute Business Edition」となります。
【<参考>常時インバータ】ユタカ電機製作所「YEUP-101SSA」
容量 | 1000VA/800W |
給電方法 | 常時インバータ |
波形 | 正弦波 |
制御ソフト | 有償(FeliSafe Pro) |
参考程度にギリギリ家庭用としても導入できそうな「常時インバータ」方式のUPSを紹介します。容量的にある程度のゲーミングPCまではカバーできますが、サーバーラック搭載を前提としたサイズ感で高価です。もちろん制御ソフトは有償です。